こんにちは。楽器工房コンチェルトの久保です。
山梨県のピアノ調律師です。
ピアノなどの木製のアコースティックな楽器を扱った経験がある方なら、湿度が楽器に与える影響について聞いたことがあるかもしれません。
日本には四季があり、ピアノにとっては苛烈な環境といえますので、湿度がピアノに与える影響や対策について是非知っておいてほしいと思います。
本記事は、次のような疑問を持っている方の参考になるかと思います。
- ピアノにとって最適な温度・湿度って?
- 温度・湿度管理を間違えるとどうなる?
- 温度・湿度はどんな風に管理する?
ピアノの最適な温度・湿度
楽器工房コンチェルトでは、“温度に対して適切な湿度にする”ように勧めています。
具体的には、以下の通りです。
- 20℃の時、湿度50%が最適
- 10℃の時、湿度40%が最適
- 30℃の時、湿度60%が最適
- 10℃以下、40℃以上はNG
- 40%以下、70%以上はNG
図で表すと、下図です。
水色の線で引いた温度と湿度の関係が適切な環境、赤点線はNG環境としています。
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湿度・多湿による障害
湿度が高くなり、結露が発生した場合、ピアノにどんな影響が出るかを画像で紹介していきます。
アップライトのダンパーレバー
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出した音が伸びたままになってしまい、ダンパーレバーを外してみたところ、赤錆で動かなくなっていました。細かい部品の取り換え修理です。細かい作業が延々と続きます。
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ダンパーを動かす金属部品が錆びてスムーズな動きをはばむため、しっかり磨き表面を滑らかにします
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アップライトのペダルを踏むと動いてこすれる部品です。金属部品の錆びでグリーンのクロスがすり減って硬くなり、ペダルを踏むとギィギィノイズが出ます。金属部品を磨きだし、クロスを新品に変えます。
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アップライトのペダル関連部品です。永年の使用で赤いクロスが擦り切れて粉になって下に落ちています。貼り替えなければいけません。
ペダル関連
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アップライトのペダル関連部品。緑の編み込みクロスが削れて金属にこびりついており、ピアノ内部が結露した証拠となります。
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チューニングピン・弦
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グランドピアノのチューニングピンと弦です。錆びや汚れがひどく、赤いクロスは虫が食っています。新しいものに交換したいところです。
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真鍮(しんちゅう)のロゴ
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鏡のようなピカピカの真鍮のロゴが永年の結露の繰り返しでこんなになります。定期的な調律も怠りがちで設置環境についてのアドバイスも受けられなかったと思われます。
鍵盤部品
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錆び、汚れを落とすためしっかり磨きます。
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鍵盤とはまさにピアノ演奏のカギです。スムーズに動かなければなりません。
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錆びを取りたいところですが、メッキを破壊してしまっているので、新品部品に変えなければなりません。
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ハンマー
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自重で”ストン”とスムーズに元の位置に戻らなければいけないハンマーが戻らない図です。全てのハンマーの関節部分の動きを分解作業でスムーズな動きに揃えます。
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ハンマーが戻らないと2度目の音が出ません。人間の関節のように滑らかに動くように、細かいパーツを分解修理します。時間のかかる根気のいる作業です。
キャスター
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温湿度管理の方法
温湿度の管理について、アップライトとグランドピアノに分けて解説します。
アップライトピアノの場合
まずは、部屋の温湿度を除湿または加湿して、ピアノに最適にします。
補助的な器具として、湿度調節機を取り付けるのがオススメです。
下図のように取り付けます。
電化製品ですので音に影響が出ると思われるかもしれませんが、無音ですので演奏に支障はでません。
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グランドピアノの場合
湿度調節機を取り付けることは可能ですが、アップライトほどの効果がありません。
そのため、部屋全体を加湿・除湿して調整する方法が良いでしょう。
まとめ
今回は、多湿がピアノに与える障害について紹介しました。
梅雨や暖房を使う冬は特に気をつけなければなりません。
適切な温度・湿度になるように設置環境に気をつけましょう。
以上です。