こんにちは。楽器工房コンチェルトの久保です。
山梨県の調律師です。
ピアノって一見するときれいに見えるものが多いですが、実は長年手を入れなければ汚れてきます。
例えば、ピアノの背面にはホコリが溜まり、ペダルはくすみ、ピアノの内部には異物が入りこんでいます。
本記事では、ピアノの汚れの様子とクリーニングの一端をご紹介します。
クリーニングは、掃除機・雑巾がけを基本に、場合によって消毒・抗菌していきます。
アップライトピアノのクリーニングの様子
まずはアップライトのクリーニングからご紹介します。
クリーニングした時のBefore/Afterの画像を掲載します。
内部(鍵盤部分)
ポケット部分(鍵盤の下に位置する台)に入り込んだ物は、ピアノ発音時の大きな雑音の原因になります。
ミイラ化したネズミの死骸があったこともありました(笑)
*本記事では、ミイラ化したネズミの死骸は載せていませんので、ご安心ください。
Before
![upright_inside(keyboard)_before_1](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_insidekeyboard_before_1.jpg)
10円玉を見つけました。
![upright_inside(keyboard)_before_2](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_insidekeyboard_before_2-1024x768.jpg)
After
![upright_inside(keyboard)_after_1](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_insidekeyboard_after_1-1024x768.jpg)
次の画像は上図のピアノとは別のピアノですが、ネズミが侵入した形跡がありました。
時にはネズミの赤ん坊が住んでいることもあります。
ピアノの内部部品をかじり排泄もするので恐ろしいです。
ネズミ対策をしないといけません。
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/7a7118ad1bf7e695b280a3eed9603993-1024x768.jpg)
背面
普段はなかなか掃除ができませんので、ホコリや不意に落としたものがタップリです。
Before
![upright_back_before_1](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_back_before_1-1024x768.jpg)
![upright_back_before_5](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_back_before_5-1024x768.jpg)
![upright_back_before_4](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_back_before_4-768x1024.jpg)
After
![upright_back_after_1](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_back_after_1-1024x768.jpg)
![upright_back_after_2](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_back_after_2-1024x768.jpg)
ペダルのクリーニング
次は50年前のヤマハアップライトのペダルです。
長年手入れをしていないと、サビや汚れでくすんできます。
薬剤を使ってバフがけをしてクリア塗装をします。
ペダルを磨くときは、お客様宅でもできますが、1度お持ち帰りさせていただいて工房で作業をした方が時間をかけて徹底的にできます。
費用が増えますが、持ち帰って作業をする方をおすすめしています。
Before
![upright_pedal_before](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_pedal_before-768x1024.jpg)
After
![upright_pedal_after](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_pedal_after-768x1024.jpg)
外装のクリーニング
外装は、こびりついた汚れをポリッシャーを使って磨きだします。
小さい擦り傷は、この作業で消えてしまいます。
大きい傷さえなければ新品のような輝きになります。
![upright_exterior_4](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_exterior_4.jpg)
手に持っているのがポリッシャー
![upright_exterior_1](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/11/upright_exterior_1.jpg)
グランドピアノのクリーニングの様子
次にグランドピアノのクリーニングの様子を掲載します。
内部
Before
こちらの画像は、毎年他社にて調律をしていたというお宅に、ピアノの先生のご紹介で初訪問したときのものです。
しばらく呆然としました。
まずは清掃しなければ何も作業ができません。
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/1fabeab3884ac69eb55dbea1dab874e0-768x1024.jpg)
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/f40aca196b8640fea96bd91fc2776eea-768x1024.jpg)
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/2801e11e3433ef8f6db80147d72b750c-768x1024.jpg)
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/29ede22d905bc988a1d51b4337aa1dee-768x1024.jpg)
After
埃は無くなりさっぱりしてきました。
が、金属部品は錆びだらけ、埃で見えなかった響板には亀裂が発見されました(汗)
内部清掃だけで2時間。
ハンマーファイリング、粗整調、調律、粗整音で丸一日たっぷりかかり、最後弾かれてお客様は弾き心地の激変に驚かれていました。
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/29fe532f17b9ff78863d130b4d231724-768x1024.jpg)
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/81cfdc766bafc8f7c3645b2c7888f483-768x1024.jpg)
[番外編] 衝撃的だったピアノ
次にご紹介するのは、永年、他社で年に2回定期的な調律をしていたグランドピアノです。
Before
こちらは初訪問時の画像です。
驚きました。
鍵盤周りは永年ダニだらけだったのではないか・・・。
当然、触ってないので鍵盤タッチなどの調整も皆無でした。
悪声を放つ極悪ピアノです。
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/1ee8c199b71e8945fe26a2e63f893b5e-768x1024.jpg)
After
![](https://pianoatelier.org/concerto-cms/wp-content/uploads/2021/12/b699021bd8d7b13e31b774ee3ff316ed-768x1024.jpg)
クリーニングする時の注意点
次のようなことに気をつけてクリーニングをしています。
- 鍵盤タッチ感にダイレクトに影響するような金属の錆や汚れは、傷をつけないように注意して磨きだします。
- 過去、ペーパーをかけて錆取りをしてあるものを見たことがありますが、絶対にいけません。鍵盤タッチにダイレクトに影響してしまいます。
- 弦を綺麗にしようと家庭用の掃除液で磨くのはNGです。
- 音が激変し、困って相談されたこともあります。
- 外装磨きは、ピアノに合った溶剤を使用します。
- ピアノに合っていない溶剤を使用すると、ピアノの塗装がバキバキになったりします。
お客様自身で実施されるとき、むやみやたらに洗剤を使用すると思わぬ事故になりかねませんので、要注意です。
ことわざ?にもありますが、結局高くつきます。
知識や段取りはとても重要です。
ひどい損傷が見つかれば別途修理や部品交換も考えなければなりません。
外装のお手入れについては次の記事にまとめていますので参考にしてください。
まとめ
今回は、アップライトピアノとグランドピアノ別にクリーニングについてご紹介しました。
作業が終われば新品と間違えるほど綺麗になります。
ピアノは手を入れないと永く使えません。
大事にしているつもりでいても開けてビックリということもありますので、ぜひ愛情をかけてあげてください。